2013.10.24
【 変わらぬ心 】
春の日の花と輝く
うるわしき姿の
いつしかにあせてうつろう
世の冬は来るとも
わが心は 変わる日なく
御身をば慕いて
愛はなお緑 色濃く
わが胸に生くべし
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ トーマス・ムーア (堀内敬三 訳)
上の詩(曲)「春の日の花と輝く」は、アイルランド民謡で、私が高校生の時に習った、すごく好きな歌です。
現在の高校生も、学校でこの歌を歌っているのでしょうか・・・?
曲の中の歌詞で、若々しい時代を「春の日」とし、衰えゆく日々を「世の冬」と表しています。
常に変わり、移ろいゆく無常の世界を指し示しているともいえます。
そんな無常の世で、たとえ姿かたちが色あせても、変わらず慕い、想い続ける心。
「変わらぬ心」とは、なぜこうも尊く美しく感じるのでしょう・・・
私の好きな映画に「フォレスト・ガンプ」という作品があります。
知能が低く、身体が歪み、足に矯正具をつけていて、周りにいじめられ、馬鹿にされ続けたガンプ少年。
高校時代、あるきっかけで、矯正具が外れ、誰よりも速く走れるようになります。
そこから、ガンプの大活躍がはじまります。
見栄や欲もない純粋なままで有名になり、成功をおさめていくガンプ。
逆に、周りの人間がいかに欲にとらわれ、時代(環境)に流されているかがよく表現されています。
そんな活躍のシーンも面白く大好きなのですが・・・私がこの作品の中で一番好きなシーンは、
作品中に何回か出てくる、ガンプがひとりべンチに腰かけて物思いにふけるシーンです。
正面を見つめ、運命と対話でもしているかのように、静かに座っているガンプ。何を思い、考えているのでしょう。
自分の今までの人生、出逢った人達、いつも愛してくれた母、そして、初恋の相手ジェニー。
時が経ち、離れて別の人生を生きていても、ガンプは変わらずジェニーを想い続けます。
そして、ジェニーと再び出会い、大きな別れを経て、ガンプは自分の息子と静かに並んでベンチに腰かけるのです。
「春の日の花と輝く」を聴くと、私は自分の少年時代を思い出したり、このガンプの姿を思い浮かべたりします。
少年のまま、変わることのない素直な心を持ち続けたガンプ。
「心が変わる」とは、心(想い)が消えて別のものになってしまうということではなく、
その心の上に様々な欲望やしがらみ、よけいな分別心などが重なり、見えなくなってしまった状態を指すのだと思います。
万物は流転しています。人の身体の細胞も3~4ヶ月で殆どが入れ替わります。 心が全く変わらないわけはないのです。
ただ、大切にすべきもの、守り続けたいものを信じ、抱き続ける、意思や想いが強ければ、
それは「信念」となり変わらずにいられます。
「想い」にはエネルギーが要ります。ずっと変わらず想い続けるなら、なおさらです。
しかし、そのような想いこそが、人を救い、自分を支えてくれる、大きな力となるのです。
世の冬が来るとも、愛はなお、緑に色濃く胸に生くる・・・体は衰え、たとえ死に近づこうとも、心は輝く春のままである、と。
そのように、いつまでも輝きを心に持ち続けたいものです。
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